resp-kingofmed’s blog

地方大学呼吸器内科医の雑記帳

免疫療法のこと

芸能界も変わっていきますね。ちょっとうらやましい。

ふいに「YAZAWAの2秒」というフレーズを思い出しました。

 

 

京都大の本庶佑先生のノーベル賞受賞により話題になっている免疫療法。

私も現場で診療にあたっている医師として一言申し上げたいことがあります。

患者さんやそのご家族、関係者の方々は、

どうか、どうか騙されることなく、正しい知識を持っていてください。

 

免疫療法は巷でいう「代替医療」としての免疫療法の方が世間で広く認知されることになりました。

紛らわしいと感じられている方も多いとは思いますが、

今回の免疫療法とは大きく違うものです。

 

医療者をはじめ、多くの方々が言われているように、

代替医療をすること自体に関しては否定はしませんが、金銭的なことをはじめもろもろのかけたコストに見合う効果があるかどうかを冷静に判断してください。

 

医療者から代替医療を提案することはめったにないはずです。

それは、もともと医療者の原則として「Do no harm」(直訳すると、害のあることはしないというような意味)と言って、

「この患者さんに効果がある」という[根拠]がないとその治療を施してはいけないと考えて日々診療をしているからです。

確かに、癌との戦いが長くなってくるとその分どんどんと「エビデンス」と言われる(効果があるという)医学的[根拠]がだんだんとなくなっていきます。

なぜかというと、癌と長く戦っている人が(亡くなって)だんだん数が減ってくることで、個々の患者さんの現在の病状と似たシチュエーションが見つかりにくくなり、

過去に同じような人に「ある治療をしてそれが効いたor効かなかった。」という情報自体がなくなるため、効くかどうかが全く分からなくなってしまうのです。

医学的な[根拠]がなくても、これまでの医師としての(治療)経験を駆使して治療にあたることもありますが、経験もひとつの[根拠]です。

 

代替医療はこの[根拠]がないものと考えていただいてよいかと思います。

効果があるのが1000人に1人や10000人に1人かわからないですが、

医学的治療と比較してきちんと優位が示されたものはないはずです。

効くか効かないか[根拠]がないものなので、

ギャンブルといってもいいのかもしれません。

 

みなさんにご理解いただきたいのは次の4つです。

・「標準治療」が最も[根拠]に裏付けされた最高の医療であること

・医療者側は患者さんの社会背景も含めて時には多数の医師で話し合った上でデメリットをメリットが上回る医学的[根拠]がある治療だけを薦めていること

代替医療を行う前に[根拠]のある治療はやりつくしたのか考えてほしいこと

・残念ながら必ずいつか治療には終わりが来ること

 

 

相談を持ち掛けにくい担当医/主治医もいるかとは思いますが、

(治療方針について十分に話し合える雰囲気をつくるのも医療者の務めなのですが…)

どうか十分に担当医/主治医と話し合われて、治療方針を判断されることを願います。

 

置かれている状況や人生観などの考え方はそれぞれ違うと思いますので、

ここに書いたことが当てはまらない方も多くいらっしゃるとは思いますが、

もう一度考えるきっかけだけにでもなれば幸いです。